高松高等裁判所 昭和25年(う)418号 判決
其の第一点の要旨は原審公判調書によれば第一回公判に於て検察官は被告人の本件犯行に関する自白の記載ある供述調書二通を他の証拠書類と共に提出し裁判官がその証拠調をなし第二回公判に於て更に共犯者三吉常雄の供述調書の証拠調をなしている即ち被告人の自白の記載ある供述調書を他の証拠が取調べられた前に取調べられているから原審公判手続は刑事訴訟法第三百一条の規定に違背しこの違背は判決に影響を及ぼすことが明かであるから原判決は破棄を免れないと謂うにある。
そこで本件記録を観るに、被告人の検察官の起訴状朗読後それに対する陳述と検察官が原審第一回公判で先ず提出し前記自白の記載ある供述調書に先だち証拠調をした松本幸郎作成の盗難届書以下合計十通の証拠書類とを綜合すればこれ等の証拠で本件公訴の犯罪が現実に行われたものであつて単に想像的なものでないということを蓋然的な程度迄証明することが出来たものと窺える従つて原裁判所は右証拠につき取調をした結果一応の心証を得た上所論の如き供述調書二通を証拠として取調を施行したものであると推認するに難くない。然らば其の後検察官及被告人側に於て攻撃防禦の方法として如何なる証拠の提出があり且つその取調をしたとしても最早刑事訴訟法第三百一条の規定の趣旨である裁判官をして其の被告事件についてあらかじめ偏見又は予断を生ぜしめる虞ある場合ではないから論旨は理由がない。